過去・現在・未来。。
暗室作業を始めて経験したのは1986年で、僕はその時、高校生でした。当時はデジタルカメラなんてものはなかったし、カラーフィルムも現像代も今よりも高価でした。高校生のお小遣いなんてたかが知れているので、カラーフィルムで写真を楽しむことは出来ませんでしたし、学校には暗室が完備されているので、写真を楽しむなら安価なモノクロになるというのは、当然の帰結になります。そんなわけで、学生の頃はフィルムと印画紙さえ買えば、モノクロ写真を満喫することが出来たのです。カラーじゃなくモノクロだったというのは、単純にコスト的な問題にすぎませんでした。
出発点はコスト的なことが理由でしたが、続けていくうちに暗室で作り上げていくモノクロ写真にのめりこんでいくことになります。撮影からプリントまで、自己完結出来ることの充足感や、粒子の密度によって表現されるグラーデーションがとても美しく感じられるようになり、写真はモノクロだなあって思うようになったのです。
就職してからは、自由に使える暗室が身近にあるような環境ではありませんでしたし、岐阜のような地方では、レンタル暗室もありません。モノクロフィルムで撮影しそれを外注した時の仕上がりに満足が出来るはずがないことは知っていましたし、外注したら安価ではなくなるのです。それならいっそカラーの方がいいと思い、しばらくはカラーフィルムを使っていました。
カラーフィルムを数年間続けて使っていましたが、やはり暗室への思いが募り、とうとう自宅暗室を開始する決意をしました。本格的にやるかどうかは怪しかったので、最初は安価な35mm専用機を使っていました。
その数年後に、世の中にデジタルカメラが台頭してきました。撮影からプリントまで自己完結出来るという意味では、デジタルも同様ですが、モデルサイクルが短いデジタル機器や、実体のない電気信号で記録される画像データを扱うのは、どうも好きになれません。そんなわけで、デジタル写真機器が手の届く価格帯になっても、食指は動きませんでした。
コスト重視で開始したモノクロ写真でしたが、現在では大判写真用の引き伸ばし機まで買ってしまい、すっかりと暗室でモノクロ写真を作ることに熱中しています。
近年、銀塩写真の未来は暗い。フィルムや印画紙はいつまで供給されるか分からない。デジカメのセンサーの性能は既にフィルムを凌駕している。等といった記述をあちこちで見ますが、そんなのは僕には関係がありません。フィルムや印画紙が供給されなくなるかどうかという問題は、僕の手の届く場所にはありません。その日が来るか来ないかは分かりませんが、入手できるうちは楽しむつもりでいますし、個人的にはフィルムや印画紙が入手不能になることは、当分の間はないと思っています。そして、デジタルとフィルムの性能比較も僕にとっては無意味なことです。性能よりも手法の方が僕にとっては大切ですから。
僕が暗室を始めたのは、20年前でした。現在も暗室でモノクロ写真を作っています。そして10年後もきっと暗室作業でモノクロ写真を作っているでしょう。
2007年2月6日執筆
comments